様々な商品の値上げ 要因の1つとは?
コロナ禍、ロシアによるウクライナ侵攻などの影響で、食卓に欠かすことができない「食卓油」の価格が高騰しています。食用油の価格高騰の波は日本だけではなく、世界で連鎖し、様々な商品の値上げにつながっていることがわかっています。
食用油大手の「日清オイリオグループ」は、原材料価格の高騰を受け、食用油の一部を7月から値上げすると発表しました。「Jーオイルミルズ」「昭和産業」も相次いで値上げを発表しました。大手3社の主要製品の値上げは、昨年以降6回目になります。なぜ値上げが繰り返されているのでしょうか?
世界で連鎖する価格高騰
各社の値上げの背景にはいくつもの要因が絡み合っているといいます。
まず昨年は、食用油の原料の1つである「大豆」の主な産地・ブラジルでの天候不順により、収穫量が減少したこと、中国などの経済活動再開にともなう需要の拡大が値上げの理由でありました。しかし、ロシアによるウクライナ侵攻がさらなる混乱を招きました。
ウクライナは「ひまわり油」の輸出量が世界一で、シェアは全体の4割近くに上ります。ひまわり油はひまわりの種子を原料とした食用油です。黒海に面するウクライナ南部の港湾都市オデーサといった輸出の拠点となる主要な港がロシア軍によって封鎖されたことで、輸出が大幅に減少する事態になっています。
またウクライナは、カナダやオーストラリアに次ぐ、食用油の原料の1つ「菜種」の輸出大国でもあります。「菜種油」の輸出量も減少し、ヨーロッパが「ひまわり油」の代替品として、「菜種油」にシフトしていることも相まって需給がさらにひっ迫していたことで、食用油の価格高騰が起こっている状況です。
ひまわり油を多く使うヨーロッパでは、ひまわり油の輸入が途絶え、他の食用油も軒並み高騰したことで、値上げを余儀なくされるお店が増えているとのことです。
さらに、食用油の高騰は東南アジアにも飛び火していて、インドネシアでは食用油の値下げを政府に求める市民の抗議デモが起きているといいます。インドネシアはアブラヤシから採れる「パーム油」生産の6割近くを占める最大の生産国で、食用油として広く使われています。しかし、「ひまわり油」の代替品としての需要が国際的に高まり、価格が高騰し、4月には1年前と比べて最大で2倍近くにまで値上がりしました。
インドネシアでは日本でも馴染みの「ナシゴレン」のように、様々な食材を油で炒めたり揚げたりする料理が好まれており、市民の暮らしには欠かせない料理の値上げが続いている状況です。
インドネシア政府は国内への供給を優先して価格を抑えるため、一時輸出を禁止する措置に踏み切る事態となりました。
日本への影響
パーム油の価格高騰の波紋は日本にも影響しています。パーム油は日本でもカップ麺やスナック菓子、チョコレート、アイスなどの加工食品だけではなく、洗剤やシャンプーなどの原料としても幅広く使われています。
シャンプーやボディーソープの原料となるのは、大半がパーム油から作られる「脂肪酸」です。コロナ禍で東南アジアの農園で働く労働者の人手不足などから、「脂肪酸」の仕入価格は以前から上がっていましたが、ウクライナ情勢を背景にさらに高騰しています。そこに原油高、円安の影響も加わっているため、せっけんメーカーでの仕入れ価格は2倍以上に高騰しているといいます。
原材料費の高騰が起こっていますが、身近な食料品価格の値上がりの割合はまだ比較的低くとどまっているとの見方もあります。しかし、企業側では抑えきれないレベルにきているところもあるため、価格転嫁の動きがこれからも続くので、できるものは国産品へ切り替えるなどの対策が必要となっています。
日本が輸入に頼っているものは、食用油、小麦、水産物、トウモロコシ、エネルギーなど。元々コロナの影響で物価高騰が起こっていたのが、今年に入ってウクライナ情勢、円安が物価高騰に拍車をかける形になっています。世界では価格高騰、食品不足の影響で、食料の輸出国が自国への供給を優先するため、輸出を規制する「囲い込み」も起きていて、まさに大変な状況なんです。
食料は人間の生命の維持に欠かすことができないものであるだけでなく、健康で充実した生活の基礎として重要なものです。食料の入手可能性とその方法に関する、国家レベルの事項である「食料安全保障」への意識を高めることがいま、不可欠となっています。
農林水産省 食料安全保障とは
NHKニュース 食用油の値上げが止まらない~世界で連鎖する価格高騰~
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