ケガの保険 労災保険とは?保険入門その⑤
今回は仕事用のケガの保険(傷害保険)のお話をします!仕事用の傷害危険は大きく分けて2つあります。
- 国が扱う政府労災保険
- 保険会社が扱う上乗せ労災保険(任意)
政府労災保険は、従業員などが加入する一般政府労災と、一人親方などが加入する特別加入があります。特別加入制度については、厚生労働省ホームページより抜粋してご紹介いたします。
Q.特別加入制度とは何ですか。
引用:厚生労働省ホームページより
A.特別加入制度とは、労働者以外の方のうち、業務の実態や、災害の発生状況からみて、労働者に準じて保護することがふさわしいと見なされる人に、一定の要件の下に労災保険に特別に加入することを認めている制度です。特別加入できる方の範囲は、中小事業主等・一人親方等・特定作業従事者・海外派遣者の4種に大別されます。
労災保険は、日本国内で労働者として事業主に雇用され賃金を受けている方を対象としています。そのため、事業主・自営業主・家族従業者など労働者以外の方は労災保険の対象にならず、業務により負傷した場合などでも労災保険給付を受けることは出来ません。しかし、例えば中小事業の場合、事業主は労働者とともに労働者と同様の業務に従事する場合が多いこと、また、建設の事業などの自営業者は、いわゆる一人親方として、労働者を雇わずに自分自身で業務に従事するため、これらの方の業務の実態は労働者と変わらないことから、労働者に準じて保護することを目的としています。
ここでは政府労災保険について詳しくお話させていただきます。
政府労災保険とは?
政府が運営している政府労災保険=労働者災害補償保険は、労働者が業務災害または通勤災害にあった場合、迅速かつ公正な保護をするための制度です。労働者を1人でも雇っている企業は、必ず政府労災保険に加入しなければなりません。労働者とは、「職業の種類を問わず、事業に使用される者で、賃金を支払われる者」のことなので、労働者であればアルバイトやパートタイマーなどの雇用形態は関係ありません。
政府労災の補償は以下の通りです。
- 療養を受けるための給付
- 社会復帰のための促進
- 労働者の安全・衛生の確保
- 労働者や遺族に対しての援護など
また任意である労災の上乗せ保険は、「政府労災の支給を受けても足りない部分」を補うために加入します。必要な補償はどれぐらいなのか絞り込んで、必要以上に補償をつけないようにしましょう。
労災年金給付等の算定の基礎となる「給付基礎日額」については、労災保険法第8条の3等の規定に基づき、毎月の勤労統計の平均給与額の変動に応じて毎年自動的に変更されています。
業務災害とは?
業務災害とは、業務上の事由によって労働者が負傷、疾病、障害または死亡したことをいいます。業務上とは業務が原因であることで、業務と負傷等の間に一定の因果関係があることをいいます。労災保険の適用されている事業場(法人・個人問わず)に雇われていることが原因で発生した災害に対して、保険給付が行われます。
保険給付に該当するのは、所定の労働時間内や残業時間内に、事業場施設内で業務に従事している場合です。保険給付に該当しない、業務災害とは認められない場合は以下の通りです。
①労働者が就業中に私用(私的行為)を行い、または業務を逸脱する恣意的行為をしていて、それが原因となって災害を被った場合
②労働者が故意に災害を発生させた場合
③労働者が個人的なうらみなどにより、第三者から暴行を受けて被災した場合
④地震、台風など天災地変によって被災した場合(立地条件や作業条件、作業環境などにより、天災地変での災害を被りやすい業務の事情がある場合は認められます。)
これは、就業時間の前後で事業場施設内にいて業務に従事していない場合が該当します。事業場にいたとしても、実際に業務をしていないと私的行為にあたるためです。事業場の施設・設備の管理状況などが原因で発生した災害については、業務災害となります。例えば作業中にトイレへ行った際のケガや、出張中での宿泊中のケガなどがあります。
業務上疾病とは?
業務上の疾病とは、労働者が特定の業務に従事していることによってかかる、もしくはかかる確率が非常に高くなる病気のことです。業務との間に相当な因果関係が認められる場合に、労災保険給付の対象となります。
- 業務上の負傷に起因する疾病
- 物理的因子による疾病
潜水病や騒音による難聴などのことです。 - 身体に過度の負担がかかる作業に起因する疾病
腰痛や腱鞘炎などがあります。 - 化学物質などによる疾病
化学物質に起因する呼吸器疾患、皮膚疾患、酸素欠乏症などのことです。 - 細菌、ウイルスなどの病原体による疾病
- その他厚生労働大臣の指定する疾病
上記以外にも、業務に起因することが明らかな疾病なども業務上疾病と認められます。発病に起因する業務だと認められないと、業務と疾病の間に相当な因果関係は成立しません。例えば、労働者が就業時間中に脳出血を発症したとしても、その発症原因に足りうる業務上の理由が認められなければ、因果関係はないということになります。
今年6月、精神障害の労災認定の基準に「パワハラ」が明示されました。厚生労働省ホームページに労災認定の事例がPDFでまとめられています。セクハラが原因で精神障害を発病した場合は労災保険の対象になりますなど、労災申請のしおりなどがあります。詳しくは厚生労働省ホームページに業務上疾病の認定等のページをご覧ください。
通勤災害とは?
通勤災害とは、労働者が通勤中に被った負傷や疾病、障害または死亡のことをいいます。「通勤」と認められるのは以下の要件を満たす必要があります。
- 住居と就業場所との間の往復
- 就業場所から他の就業場所への移動
- 単身赴任先の住居と帰省先の住居との間の移動
これらの移動を合理的な経路、方法により行うこと。
移動の経路を逸脱、または中断した場合には、「通勤」とはなりませんので、注意が必要です。ただし、逸脱や中断が日常生活上で必要な行為、最小限度のもので、厚生労働省令で定めるものである場合は「通勤」となります。
例えば、日用品の購入、病院での受診、職業訓練などを受ける行為などで寄り道をして、合理的な経路に戻った後であれば「通勤」と認められます。
住居とは、労働者が居住して日常生活の用に供している家屋などの場所のことです。東京労働局ホームページより以下に住居として認められる例を引用いたします、ご確認ください。
就業の必要上、労働者が家族の住む場所とは別に就業の場所の近くにアパートを借り、そこから通勤している場合には、そこが住居となります。
さらに、通常は家族のいる所から出勤するが、別のアパート借りていて、早出や長時間の残業の場合には当該アパートに泊り、そこから通勤するような場合には、家族の住居とアパートの双方が住居と認められます。
引用:東京労働局ホームページより
寄り道や住まいが複数ある場合など、個々の事情によって判断されるということです。
自動車事故の場合
自動車事故の場合、労災保険給付と自賠責保険による保険金支払いとの間で、二重のてん補とならないよう支払調整が行われることになります。労災保険と自賠責保険のどちらを先行して受けるかについては、労働者または遺族が自由に選ぶことができます。自賠責保険には、メリットとして仮渡金制度や内払金制度があることから、労災保険に先行して自賠責保険を受けることをオススメいたします。
業務災害・通勤災害が起こったら
業務災害・通勤災害が起こった、または従業員から報告があった場合は、落ち着いて以下の行動をしましょう!
1. 最寄りの病院へすぐに行くよう指示する
病院の受付では必ず「労災」であることを伝えます。労災保険の治療では自己負担がありません。普通に健康保険証を使って受付してしまうと、後から取消しの申請をする必要があります。十分に注意しましょう!
2.病院の確認と問い合わせを行う
病院名と住所をメモし、労災指定病院かどうか確認をとりましょう。労災扱いで受診しているかも確認が必要です。労災指定病院かどうかは、厚生労働省労災保険指定医療機関検索から検索ができますので、確認してみてください。
3.「療養補償給付たる療養の給付請求書」を作成しましょう
労災指定病院で受診した場合は「療養補償給付たる療養の給付請求書」の様式第5号で作成します。請求書はこちらをクリックして印刷してください。
労災指定病院以外で受診した場合は、「療養補償給付たる療養の給付請求書」の様式第7号で作成します。また、「医師または歯科医師等の証明」「療養の内訳および金額」の欄に証明してもらう必要があります。労災指定病院以外の請求書はこちらをクリックして印刷してください。
4. 書類に治療費の領収書(原本)を添付し、会社の管轄である労働基準監督署へ提出します
治療費の領収書と請求書などの書類がそろったら、会社の管轄である労働基準監督署へ提出します。大阪の労働基準監督署管轄地域と所在地一覧は、大阪労働局ホームページからご確認ください。
最後に余談ですが、必要に応じて短期間のみスポットで加入できる特別加入もあるようです。インターネット等で確認してみてください。ご加入の際は、加入される団体によっては組合費がかかりますので、ご注意ください!
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