なくならない足場解体中の転落事故
10/10横浜市内のマンション建設現場で、足場の解体作業をしていた60歳の男性が約40メートル下に転落する事故が起きました。男性は全身を強く打ち、搬送先の病院で死亡が確認されました。
神奈川県警金沢署によると、男性は足場の解体作業中、9階部分の幅約120センチの梁の上に置いた工具を取りに行ったところ、体勢を崩し2階部分まで転落したといいます。今回のような足場からの転落災害は後を絶ちません。
建設業の労働災害発生状況
厚生労働省まとめの2021年(令和3年)の1月から12月の労働災害発生状況によると、建設業全体で死亡者数が288人と業種別で最も死亡者数が多くなっています。死亡者数288人のうち「墜落・転落」で亡くなったのが110人で、死亡災害の4割を占め、この割合は何年も変わっていないといいます。また、労働災害統計に含まれない「一人親方等」の2021年の年間死亡者数は94人で、そのうち62人が「墜落・転落」で亡くなっているということです。
1日に1人以上が日本の建設現場で命を落とし、その原因の多くが足場等からの墜落や転落であるという状況が何年も続いています。墜落・転落事故をなくすために過去の災害事例を知り、災害防止の基本を常に意識しましょう。
墜落・転落災害の事例
- 2階建て家屋の屋根塗装作業において屋根上で滑り墜落。
作業方法は、30mのロープを被災者の腰に巻き付け、他の2人がそのロープの端部を上方で引っ張っていた。その後手持ちの塗料がなくなったので、被災者は2階のベランダに置いてある塗料缶から手持ちの缶へ塗料を移し替えることにし、屋根からベランダに降りるため腰に巻いたロープをほどいたときに、屋根上(高さ5.8m、勾配23度)で足を滑らせ地上に墜落した。なお、この工事では、足場は設置されておらず、3人とも安全帯を着用せず、また、保護帽も持参していなかった。 - 鉄骨組立作業中、足を踏み外し墜落。
2階建て店舗新築工事の鉄骨組立作業において、高さ約8mにある梁上でリップみぞ形鋼材(断面形状100×50×20mm、長さ約4m、重さ約16 kg)を運搬していた作業者が墜落したもの。幅10cmの梁の上を歩いて運搬中に足を踏み外して墜落し、直ちに病院に搬送されたが死亡した。当日、水平安全ネットを張るよう指示されていたが、作業者が墜落したときは、まだ張られていなかった。作業者は安全帯を着用していたが、フックを親綱に掛けておらず、作業主任者は複数の作業を同時進行させていたため、作業者らが安全帯を使用している状況を確認していなかった。入場時安全衛生教育の実施もなかった。 - 屋根葺き工事中、足場板とともに墜落。
木造倉庫の屋根の瓦葺き工事において、丸太足場の点検中に発生。作業責任者は当日、台風が来るのでその準備をし屋根の釘打ちはしないこと、足場は点検してから使用すること等を指示した。作業者は指示通り足場を点検しようとして屋根北側の軒先まで行き、軒先から丸太足場上に架け渡されていた足場板に飛び乗ったところ、番線等で他の足場板と緊結されていなかったため、足場板が天びん状態となってバランスを崩し、その足場板とともに約5.5m下の地上に墜落し、間もなく死亡した。このとき作業者は保護帽を着用しておらず、また、安全帯も着用していなかった。さらに、丸太足場には、手すりがなく、屋根軒先にも墜落防止措置が講じられていなかった。
中央労働災害防止協会 安全衛生情報センター「墜落・転落災害事例」
墜落・転落災害防止の基本
墜落災害防止のための主な点検項目
- 高さ2m以上の作業には作業床が設けられているか
- 高さ2m以上の作業床の端、開口部には囲い、手摺、覆い等が設けられているか
- 手摺の高さは最低75cm以上か
- 高さ、深さが1.5m以上の作業場所に昇降設備があるか
- 作業床が設けられない時、安全ネット、墜落制止用器具が使用できる設備はあるか
- 床の開口部、ピット等の蓋い(おおい)及び表示をしているか
- 夜間作業や地下室、階段室の照明は十分か
- 作業通路は確保されているか
- 墜落の危険がある箇所では、立入禁止の措置がしてあるか
- 建物と足場の隙間が30cm以上の場合、落下防止の措置がしてあるか
- 枠組足場間の筋交や手摺等を取り外した後、復旧しているか
- 足場のエンドストッパーが取付けられているか
- ローリングタワーには手摺、昇降設備、巾木(はばき)、表示板を掲示しているか
- ローリングタワーに作業員を乗せたまま移動していないか
- 架台(うま)を脚立として使用していないか
- 脚立足場は三点支持または足場板二枚敷で使用しているか
- 梯子の先端部が60cm以上突出し、75度以内の角度で固定しているか
また材料に著しい損傷、腐食等はないか - 足場昇降路以外を通行していないか
厚生労働省 建設業の労働災害をなくすために
災害発生状況をみると、墜落制止用器具(安全帯)を着用していたものの、使用していなかったという事例もありました。墜落制止用器具が単に現場入場の際のパスポートとなっていないか、装着位置やフックの掛け方を正しく理解しているか等、今一度考えましょう。
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