いろいろな“雨”を表す美しい日本語
今年のゴールデンウィークは前半雨が多かったですね。今週は14日(土)にかけて太平洋側で滝のような大雨が降ると予想されています。土砂災害、低い土地の浸水、河川の増水・氾濫には十分警戒してください。
今年の梅雨の見通しですが、近畿で6月上旬に梅雨入りと予想されています。全国的に平年より早く、短い梅雨になりそうとのことです。梅雨の雨量は全国的に平年並みの予想ですが、6月下旬から7月上旬にかけては前線の活動が活発になる日があるので、大雨に注意警戒しましょう!
今回は“雨”を表す美しい日本語についてお話したいと思います。昔の人は空から降ってくる雨に多くの意味をつけて、様々な呼び方で表していました。農作物にとっては恵みの雨。梅雨は大切な季節です。農耕が盛んだった古代の日本では特に雨はとても大切なものだったこと、また、日本は雨の多い「温帯雨林地帯」であることが雨の言葉が多い理由だと考えられています。日本語の雨の種類、表現、呼び名は400種以上あると言われています。ここで美しい日本語を少しご紹介いたします!
雨の降り方を表す日本語
強い雨や弱い雨、いきなり降る雨など、雨の降り方を表す日本語と言われるといくつか思い付くと思います。
強い雨
・大雨(おおあめ)大量に降る雨
・豪雨(ごうう)大量に降る激しい雨
・雷雨(らいう)雷を伴う激しい雨
・鉄砲雨(てっぽうあめ)大粒の強烈な雨
・篠突く雨(しのつくあめ)細い竹や篠で突くような激しい雨
・飛雨(ひう)風が混じった激しい雨
弱い雨
・小雨(こさめ)それほど長く降らない弱い雨
・霧雨(きりさめ)霧のように細かい雨
・涙雨(なみだあめ)涙のようにほんの少しだけ降る雨
・天気雨(てんきあめ)晴れているのに降る雨
・天泣(てんきゅう)空に雲がないのに降ってくる細かい雨
・狐の嫁入り(きつねのよめいり)太陽が出ているのに降る雨
ほとんど同じような意味でも、違う言葉で表現するのは日本語の面白さだなと思います。
雨を色で表す日本語
・緑雨(りょくう)青々とした新緑の草木に降る雨
・紅雨(こうう)春に咲いた花々に降り注ぐ雨
・白雨(はくう)夏、明るい空から降るにわか雨
・黒雨(こくう)空を真っ暗にするような大雨
雨に色はありませんが、降っている状況を綺麗な色で表されていて本当に美しい日本語です。
春の雨を表す日本語
・春雨(はるさめ)春のしとしとと降る雨。花散らしの雨とも呼ばれる
・春霖(しゅんりん)3月から4月にかけてぐずつく雨。春の長雨とも呼ばれる
・雪解雨(ゆきげあめ)冬に積もった雪を解かすように降る雨
梅雨の雨を表す日本語
・入梅(にゅうばい)梅雨に入ること。由来は梅の実が熟す頃に降る雨から
・五月雨(さみだれ)旧暦五月に降る長雨。梅雨のこと
・旱梅雨(ひでりつゆ)雨があまり降らない梅雨。空梅雨(からつゆ)、枯れ梅雨(かれつゆ)とも呼ばれる
夏の雨を表す日本語
・夕立(ゆうだち)夏の夕方に降る、短時間で降る雷を伴った雨
・神立(かんだち)神様が何かを伝えようとしている「雷」を指すことから、夕立や雷雨を意味する
・土用雨(どようあめ)夏の土用の頃(7月下旬~8月上旬)に降る大雨
秋の雨を表す日本語
・秋雨(あきさめ)秋に降る冷たい雨。夏から秋にかけて現れる秋雨前線によるもの
・秋時雨(あきしぐれ)晩秋に降る降ったりやんだりする雨
・秋霖(しゅうりん)秋の長雨
冬の雨を表す日本語
・時雨(しぐれ)あまり強くないが、降ったりやんだりする雨。主に秋から冬のものをいう
・氷雨(ひさめ)みぞれや雪に変わる前の、非常に冷たい雨
・鬼洗い(おにあらい)大晦日に降る雨。追儺(ついな)と呼ばれる鬼払いの宮中行事に由来すると言われている
四季がある日本ならではの表現です。膨大にある中から一部だけ紹介させていただきました。
雨に関する有名な和歌や詩
平安時代中期の貴族・歌人として有名な和泉式部が書いた『和泉式部日記』に梅雨の雨を詠んだ歌があります。
おほかたに さみだるるとや 思ふらむ 君恋ひわたる 今日のながめを
現代語訳すると、「普通の梅雨の雨だと思っているでしょうけど、あなたのことを想い、流す私の涙なのですよ。今日の長雨は」となります。雨を自分の涙に例えて詠まれた切ない恋の歌です。
宮沢賢治の有名な詩「雨ニモマケズ」は今でも多くの人を励まし、心に寄り添ってくれます。
雨にも負けず風にも負けず雪にも夏の暑さにも負けぬ丈夫なからだをもち
慾はなく決して怒らずいつも静かに笑っている
一日に玄米四合と味噌と少しの野菜を食べ
あらゆることを自分を勘定に入れずに
よく見聞きし分かりそして忘れず
野原の松の林の陰の小さな萱ぶきの小屋にいて
東に病気の子供あれば行って看病してやり
西に疲れた母あれば行ってその稲の束を負い
南に死にそうな人あれば行ってこわがらなくてもいいといい
北に喧嘩や訴訟があればつまらないからやめろといい
日照りの時は涙を流し寒さの夏はおろおろ歩き
みんなにでくのぼーと呼ばれ
褒められもせず
苦にもされず
そういうものにわたしはなりたい
有名な雨ニモマケズは、宮沢賢治の死後に発見された詩だったそうです。病に伏し、すでに遺書を残し死を覚悟しながら、祈りに近い詩を書いていたのですね。
【雨ニモマケズ原文】
雨ニモマケズ
風ニモマケズ
雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ
丈夫ナカラダヲモチ
慾ハナク
決シテ瞋ラズ
イツモシヅカニワラッテヰル
一日ニ玄米四合ト
味噌ト少シノ野菜ヲタベ
アラユルコトヲ
ジブンヲカンジョウニ入レズニ
ヨクミキキシワカリ
ソシテワスレズ
野原ノ松ノ林ノ䕃ノ
小サナ萱ブキノ小屋ニヰテ
東ニ病気ノコドモアレバ
行ッテ看病シテヤリ
西ニツカレタ母アレバ
行ッテソノ稲ノ束ヲ負ヒ
南ニ死ニサウナ人アレバ
行ッテコハガラナクテモイヽトイヒ
北ニケンクヮヤソショウガアレバ
ツマラナイカラヤメロトイヒ
ヒデリノトキハナミダヲナガシ
サムサノナツハオロオロアルキ
ミンナニデクノボートヨバレ
ホメラレモセズ
クニモサレズ
サウイフモノニ
ワタシハナリタイ
青空文庫
日本語の雨の表現から少し話はそれましたが、雨にも負けず、コロナにも負けず、暗いニュースに引っ張られすぎず、小さな幸せを見つけながら穏やかに過ごしていきましょう♬♪
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